注:殆ど主の勝手な解釈なので、考察の一種として読んでいただけると幸いです。
Yunomix vol. 4
Yunomixは一本のストーリー
徹夜作業のお供に数え切れないぐらい聴いたYunomixですが、まぁとにかくエモい。
特に惑星ラビット(1:00:25)~の終盤の展開はエモいなぁと毎回思います。
こういうMIXは主にBPMやキーで曲順が決められていますが、Yunomixはそれに加えて曲調や歌詞の明るさにも波があるようで、1時間15分の動画1本が大きな物語として成立しているような満足感があります。
というのも、『大江戸コントローラー EP』自体がYunomiさんの作品のなかでもバックストーリーが濃い目に演出された傑作なんですよね。
YunomiさんとTORIENAさんのインタビュー記事より抜粋させていただくと、
「大江戸コントローラー」で外部から地球にきたとするじゃないですか。で、かたや別の惑星(「惑星ラビット」)では地球から離れてしまう人を示唆するような感じの、これから訪れるであろう別れみたいなものを予感させるようなストーリーがあって。
一方「バンブーディスコ」では時代が変わって、何百年か経った後に、自分たちが住んでいる地球がダメになってしまう、いつかここから出なければならないんじゃないかってことを語ってるんです。最後の「さよならインベーター」は、「惑星ラビット」で提示していた「いつかきてしまう別れ」というものが実際にきてしまった後の話です。で、そこから例えば、今自分たちのいる場所、例えば地球とかからお別れしてしまう人を想う歌になっています。さらに、地球から離れ、どこか遠い星の惑星にいってしまったその人、エイリアンは、また「大江戸コントローラー」で歌っているように別の星、地球に侵略しに行く……というような感じで、実は物語が循環するようなイメージになっています。
そんな壮大なストーリーを含んでいる『大江戸コントローラー EP』ですが、なぜここで強調しているかというと、Yunomixの曲順が『大江戸コントローラー EP』に挟まれているような構造になっているからです。
『大江戸コントローラー EP』は大江戸コントローラー→惑星ラビット→バンブーディスコ→さよならインベーダーといった曲順ですが、Yunomixも『大江戸コントローラー』で始まり、『さよならインベーダー』で終わります(『ミラクルシュガーランド』はアンコール的役割だと考えられます(後述))。
つまり、Yunomix自体にも「夢を追いかけて新天地に来る」ところから「いつか必ず訪れる別れ」までを描いたバックストーリーがうっすら意識されていると思うのです。
曲順から感じる波
具体的に曲順を追ってみると、『大江戸コントローラー (feat. TORIENA)』~『Tick Tock (Yunomi Remix) / YUC’e』まではYunomiさんの中でも屈指の明るい曲を駆け抜けていくようなフェーズになっています。
その次の『ゆのみっくにお茶して (feat. nicamoq)』『星降る夜のアデニウム (feat. nicamoq)』では、徐々に落ち着いた雰囲気に移行していき、『東京シュノーケル (feat. nicamoq)』でテーマは「儚さと幻想的」にフォーカスされたと感じました。
この部分では、悩んだり迷ったりすることをテーマとした曲が散りばめられていますね。マイナー調の曲も所々入ってきます。
ところで、『夢でまたあえたらなあ (feat. nicamoq)』と『走馬灯ラビリンス (w/ 桃箱 & miko)』の繋ぎ方は完璧すぎて個人的には好きなポイント。どちらもC→D→Em進行ですので、とっても綺麗に繋がります。
さて、『クリスタル (feat. アンテナガール) / Stereoman & Yunomi』ぐらいから徐々に盛り上がりを見せ、『すとろべりーカルテ (feat. 桃箱)』で弾けます。
しかしそれもつかの間、その後の『神様の渦』→『サンデーモーニングコーヒー』→『サ・ク・ラ・サ・ク』で終わりを予感させるような、若干の寂しさが零れ出てき始めます。『サ・ク・ラ・サ・ク』に関してはF♯m調であり、次曲から始まるラストスパートの前に、静けさを作る役割のようなものを感じました。
明るくも寂しいラストスパート
そして『惑星ラビット (feat. TORIENA)』からラストスパートが始まります。
『惑星ラビット』→『手と手』→『さよならインベーダー』どの曲もEメジャー調でメロディも明るいので綺麗に繋がっています。
「終焉は悲しいけど、始まりがあるものには必ず終わりがある。明るく前向きにいこう」といったような雰囲気を感じるメドレーです。
『惑星ラビット』はA→B→C♯m→Eの4561進行。ルートが1音ずつ上がっていき、上昇感、安心感があります。『手と手』はC♯m→A→E→Bの所謂ポップバンク進行です。Orangestarさんを始め、最近の「なんかエモい曲」で頻繁に使われてたりします。「揺らぎの中で藻掻きながら前進する感じ」がコードにも曲にも表れていると感じました。そして『さよならインベーダー』、コーラスを使いながら凄く気持ち良く繋がっています。A→E→B進行の中にBsus4だったりC♯mやG♯mが散りばめられる感じの構成ですが、これがエモすぎてコーラスと伴奏だけで泣けますね。
さよなら さよならインベーダー
踊るように銀河の中
ふたりで星を繋いでいた未来はもうないんだ
さよなら さよならインベーダー
今更戻せない時が夜空のゴミ屑になって
キラキラと瞬いてるラララ…
キラキラと瞬いてる
そんな『さよならインベーダー』ですが、切なさや寂しさを回収することなく終わります。適当に「寂しいので一緒に来ちゃいました笑」みたいな薄っぺらい救いの展開はありません。Kawaii Future Bassの明るいメロディの裏にあるのは決して子供のおとぎ話の世界ではないのです。
しかし、Yunomixではこれにちゃんと「救い」が用意してあります。(勝手な感想ですが…)それが次の『ミラクルシュガーランド』。
この曲も同じく別れを描いた曲なのですが、
またここで会えるなら
どうしてずっと胸が苦しいの
永遠の別れを描いた『さよならインベーダー』に対し、『ミラクルシュガーランド』では歌詞の中で「またここで会えるなら」と再会を明言しています。これによって、明るすぎず寂しすぎない、程よい終わり方になっているのではないでしょうか。
ループ再生で聴く人も多いであろうYunomix、次の大江戸コントローラーに戻る前仕掛けもきちんと用意してありました。
そしてこの最後4曲ですが、どれも尺が非常に長いのです。『さよならインベーダー』、『ミラクルシュガーランド』に関してはノーカットで1曲使われています。繋げ方的な都合もあると思いますが、やはり作者であるYunomiさんも長く聴いて欲しかった曲たちなのではないかと思いました。